| 10)復職へのハードル 時は、冬も終わり桜が咲き、散る頃になっていました。大学病院でのボランティアも毎週決めた内容をこなしそこそこの自信もついてきました。そこでまた主治医に復職について話してみました。主治医も、私の大学病院でのボランティア活動ができたことを評価してくれていて、体調も安定していることなどからそろそろ復職を考えても良いだろうというお言葉をいただけました。昨年の12月に短時間勤務での就業をお願いした時に会社から復職に当たっての条件を出されていました。
主治医の”大丈夫でしょう”というお許しが出たところで、早速復職への診断書を発行してもらい、会社へ復職の手続きに入りたい旨連絡しました。その後、早速産業医の面談がありました。面談では休業前からの状況を説明し、現在の治癒状況をお話しました。また、私の考えた復職プログラムの概略をお話して、プログラム通り1ヶ月の時間短縮勤務の後にフルタイム勤務を行うという内容を伝えました。ところが、なんと1ヶ月の慣らし勤務は認められないというのです。一瞬私は自分の耳を疑いましたが、産業医からはっきりとそう言われました。うつ病患者の会社復帰プログラムに於いて時間を段階的に長くしていってフルタイム勤務に戻すことによるうつの再発予防効果(リスク低減)は今や常識で、多くの企業でもそのような復職プログラムを行っており、実績も上げています。主治医が出した診断書にも慣らし勤務の条件を明記してあり、またそれはかつて12月に会社側が提示した復職条件に合致したものであるので、私の主張通りいきなりのフルタイム勤務は難しいと毅然に返事をして、その場を離れることにしました。次に、人事労務担当者との面談がありました。しかし、ここでも予想通り産業医との面談時と同じように慣らし勤務は認められない、よって今回あなたの主治医が提出された診断書の内容では復職を認められないと言われました。私の勤めている会社は1万人を超す従業員を抱える大企業です。この時は、大企業の労務管理がこの程度のものなのかと思いました。これ以上の話し合いは無用と考え、会社が一旦提示した復職条件を何の予告も合理的理由も無しに変えたことに関して、私の直属の上長を介して、改めて確認してもらうことにしました。また、労働組合に対しても今回の会社の対応に関して経緯確認を行ってもらうことにしました。 数日後、上司と打ち合わせを持つことができました。そこでわかったのは、会社の状況が私の想像を超えて非常に厳しい状況になっていることでした。まず、時間短縮勤務に関してですが、制度として存在していることは確認できました。また時間短縮勤務の有用性も理解してもらえていました。しかし、内容としてはリハビリ勤務に近いもので最大1ヶ月の間休職期間の一部として実際会社へ勤務時間を短縮して勤務するというものです。これにはいびつな状況が生まれます。会社へ勤務しているのに扱いを休職としているため給与も支給しないという状況が発生します。会社としてはこのような状況を避けたいのは当然ですし、実際適応されることは少ないそうです。よって一旦慣らし勤務の条件は飲んでみたものの、産業医、人事労務担当者はこのことを念頭に時間短縮勤務を認めなかったと思われます。あともう一つ時間短縮勤務を認められない理由として、私の所属する部署が現在研究開発業務を行っており、短縮勤務期間それに適した業務が無く業務を与えることができないということを部長さんが懸念されていました。もし、やったとしても窓際族のような扱いになってしまうことを非常に憂慮されていました。また、現在研究開発の成果に対する要求が非常に厳しく時間短縮勤務後に、うつ病のハンディを背負った状態で業務を他のメンバーと同じレベルでできるか(要するに、多大な残業にも耐え成果を出すこと)、もしそれをすると病気が悪化するのではないかということを上司として気にしているとの事でした。あと、今回の復職への手続きにおいて産業医が復職不適格の所見を出していることがわかりました。やはり時間短縮勤務が許容できないという理由のようです。 私は自分の体調や病状のみを考え、それにしたがって会社へいくつかの条件を提示しお願いしました。当然全てがこちらの要求通りになるとは思っていませんでした。会社には会社の事情と言うものがあります。しかし、今回は会社の状況が今の私にとって悪すぎました。産業医や人事労務担当者は良く考えていました。会社の状況を知り彼らの判断の正しさも少しは理解できました。会社はリハビリ施設や病院ではないので病気のことだけ考慮して会社として受け入れることはできないのは当然です。しかし、私としてはもう少し私の病状を考慮する余裕が会社にあるのではないかと思ってました。しかし、現実はそんなに甘いものではなかったということです。復職のハードルは自分が思っていた以上に高く、今の私には超えられないものでした。 |
| 付録C)労使での問題解決 今回の私のように病気での復職の際に会社との間の労働条件などに関する内容で問題が発生した場合、以下のような相談先があります。
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| 11)復職の現実 会社の実情を知りその現実を知った私は、正直復職への願望が無くなっていきました。なんとしても早く復職しなくてはというあせり感もなくなってしまいました。休職する前、入社して十数年の間、いつも自分は最先端のエンジニアであることを自負していましたし、仕事も責任を持って確実にやり遂げる事のできる技術者であると思ってきました。しかし、今の現実は、うつ病を背負い、最先端の現場から1年以上も離れその勘も失い、会社でいろんな担当者から”あせらないでもうちょっとゆっくりしたら”とか言われると、まるで私は会社で既に必要とされていないのではないかと失望しました。うつ病からの社会復帰の難しさというものを、実際体で感じた時でした。たったうつ病にかかっただけで、自分がここまで築き上げてきたものが全て無くなって行く感覚を味あわされました。 部長はいろいろとよく私のために方々にお願いをしてくれていたようでしたが、やはり部長の意図や権限では私の復職への対応はできないというお返事があり、今後引き続き会社の人事担当者、産業医とどのような手順で復職を実現させるか話し合いを継続する事となりました。 |
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