さて、11月の電気店のテレビ売り場は大変な事になってますね。来年のアナログ放送中止に伴うテレビの買い換え、エコポイント制度もあり皆さん買い換えを進めていらっしゃいます。それに伴いアナログテレビ、主にブラウン管テレビはいよいよこの世から無くなっていくんですね、ちょっと寂しいです。既にお話ししたように私はテレビ技術者です。さらに言うとアナログテレビの設計者としては本当に最後の世代の技術者です。事実、私より若い世代でアナログテレビの設計に従事していた人はほとんど居ません。私は多くの先輩技術者からテレビの発祥からの歴史を含めた技術の遷移をたたき込まれてきました。なぜなら、最新の技術だけ知っていたのでは、過去のノウハウを知る事ができないからです。また、最新の技術だけが最新の最高の商品を作れる訳でもないからです。組み込みプロセッサの実装から真空管制御技術まで全てを含んだ商品が、ブラウン管アナログテレビでした。そんな最後のアナログ世代のおっさん技術者がアナログテレビとはどんな物だったのか少し紹介したいと思います。当然、これはこれから皆さんの生活を担う現在のデジタルテレビとの対比をする為の豆知識として見て頂けると嬉しいです。
アナログテレビなどとよく言われていますが、アナログテレビの何がアナログなのでしょうか?そもそもアナログって何?と言う事をよく理解しないといけませんね。ただ、ここでアナログの対比として表現されるデジタルの説明をしてしまうと大学の講義1コマぐらいにはすぐなってしまうので詳しく知りたい方は各大学の理工学部へ行ってください。アナログテレビとはここでは、アナログビデオ信号フォーマットで送られる電波を受信し表示する機械ということにしておきましょう。でも、アナログビデオ信号って何?と思われる方は多いでしょう。これをきちんと理解するにはこれまた非常に大量の説明を必要とするのですが、ここでは言葉だけでの説明として俗によく言われていたNTSCとかPALとかSECAMと言われる規格(決め事)で放送されているビデオ信号としましょう。現在放送されているアナログ地上波放送はまさにこれですね。さて、次に進みます。
ではアナログテレビの中はどのような仕組みになっているのでしょうか? ちょっとここに大まかな中身の構成を書きます。
(アンテナ端子) → チューナー → IF(特定のチャンネルの信号) → VIF/SIF(ビデオと音声の分離) →
VIF検波 → Y/C分離(輝度信号と色信号の分離) → C/YUV変換(色信号を要素毎の信号に分解) → YUV/RGB変換
→ ブラウン管に出力
と、かなり大ざっばに書いてしまいましたが、ごめんなさいこれ以上簡単に書けません。それにこれは映像信号だけの処理部分です。音声はまた別です。しかしこの信号の流れは結構重要でデジタル放送になった今でも基本変わりません。この流れに沿った説明をします。
チューナー: これは受信した電波の中から特定の信号、ここでは皆さんが見たいチャンネルの電波だけを取り出す部分です。リモコンでチャンネルのボタンを押すとテレビの中ではここのチューナー君が動作を変えています。また、テレビは正式名をテレビジョン放送受信機と言いますがまさに受信機たるのはこの部分です。電気回路的には高周波回路となりかなりレベルの高い設計が必要な部分です。現在でも残っている数少ないアナログ回路ブロックです。
IF: 中間周波数と言います。選局された特定のチャンネルのテレビ放送信号をこの中間周波数に変換した物です。実はこの中間周波数の設定は各社のかなりのノウハウがあるので通常非公開です。画音質を決める結構根元だったりします。私も苦労しました。
VIF/SIF: これは上の中間周波数からさらに映像信号(VIF)と音声信号(SIF)に分離された物です。カラービデオ信号の規格はまさにこのVIF部分から規定されています。ようするに、NTSCだとかPALというのはビデオの信号、さらには色信号の部分の規格です。
Y/C分離: これは聞いた事があるかも知れませんね。Yは輝度信号、Cはクロマ信号(色信号)を指します。映像信号は輝度と色とに分けて処理する訳です。なぜそんなめんどくさい事を?と思われる方もいるでしょう。それはテレビの歴史にあります。テレビは最初白黒でした。すなわちY信号だけでできていた訳です。その後カラー化する際に白黒テレビとの互換性を保つ為、色信号を追加するような形にした訳です。ただ実際はこの経緯だけではなく、ビデオ信号処理の都合からもこの方が良かったりします。でも、この分離するのは結構大変なんです。各社さんかなりがんばっていました。
C/YUV変換: 単一のクロマ信号をYUV(色差信号)に変換します。なんで色差信号とかに変換するかって?それは画質の調整がしやすいからです。俗に言う画作りはここでします。映像に関する処理はこのYUV信号で行うのが便利です。このあとのRGBでの操作は難しいです。
YUV/RGB変換: YUVからRGB信号に変換します。RGB信号なのは3元色の加色混合によるカラー表現をするからです。写真などではCMYの3元色減色混合を使う事が多いですね。RGB信号はブラウン管のカソードドライブ信号となります。
このような仕組みでテレビの画像は表示されています。って全く分からない、意味がわからんという方ごめんなさい。技術者ではない方へどう説明すれば良いのか、正直分からないのです。それではいけないのですがね・・・
説明に対する苦情、ご批判は甘んじてお受け致します。また、もっと具体的にきちんと説明してくれと言うリクエストもお待ちしています。まぁ、今更アナログのテレビの事を知ってどうするというのはあると思いますが、技術者でない方なら知る必要は無いとも思えます。テレビを見る事に関してはアナログもデジタルも関係ないとも思いますので。あと、既に国内では枯れてしまった技術領域なのでこのような場所でお話しできると言う事もあります。最新のテレビ内部構成を教えてくれと言うリクエストには残念ながらお答えできません。ご勘弁ください。